サンバーでやってきたのは珍しいお客さま。
30年以上前、当社でバイトをしていた竹田燃料店さん。
家業を継ぐ前、NSXがどうしても欲しいと出稼ぎにやって来た伝説のアルバイター。
本当に購入し、今も鈴鹿でとんでもないタイムを叩きだしています。
何用ですか?
「ダウンサスを組んだらさ、まともに走れないんだよねえ。マンホールに乗り上げたら『ドーン!』」
「だからといってマンホールを避けると、今度はクルマが左右にグラングラン。踏めないんだよ」
ダウンサスの利点は低コストで見た目をかっこよくできること。
ただし、バネレートを純正よりも下げてローダウンする場合、性能は劣化しがち(ダウン幅にもよります)。
「バネが柔らかいから、プロパンをたくさん積むとまともに走れない」
仕事用の貨物車にダウンサスっていうこと自体に無理が…
「趣味もあるけどさ、プロパンの積み下ろしや、乗り降りは車高が低いほうがラクなんだよ」
なるほど、その辺はさすがプロ。
じゃあ、車高調は?うちにもありますよ。
「車高調は高すぎるよ。安くしてくれんの?」
お断りです(笑)
TT1サンバーは純正のショック長とストロークが非常に短い。
基本的にはローダウンにあまり適していない構造。
残念ですが諦めてください。ハイゼットかキャリーにしたら?
「RRだからエンジン音が静かだし、サスペンションもリーフじゃないから乗用車感覚なんだよね」
さすがクルマを良く知っている。
「オレはシャコタン世代だからさ、ホイルと車高は常にビシッとしたいんだよね」
仕方ない、当社もプロなんだから”なんとかする”のが仕事。
以前、サンバー用に全長調整式を販売しておりました。
この方法であれば、車高を下げても走行性能は向上。
問題点は高額であること…
販売台数が見込めないために、受注生産。
一台ずつ注文に応じてオーダーメイド。
キャンバー調整機構も装備。
よく考えたら、ここまでの性能は大半のオーナーにとってオーバースペック。
全員がサーキットに行くわけではない。
コストを抑えながら、スポーツ性能を向上させるサスペンションを作る方法はあります。
フロントは全長調整式に拘らず、固定式(微調整可)。
現在開発中のHA36アルト、S321vハイゼットカーゴ、S402Mライトエースでの手法。
純正マウントを使えば、さらにコストが下がり、耐久性、快適性は向上。
リアはショックは純正のまま。スプリングだけで対応。
特殊な手法で7キロにレートアップしたスプリングはすでに開発済み。
この組合せなら、フルキット¥98,000もターゲットプライス。
よし!
いっちょやりますか!
今回の話しに乗り気になのは、元OBの依頼だからではありません(笑)
軽トラック各車種用の車高調プロジェクトがすでに進行中だったから。
S200/500系ハイゼットトラック用はすでに完成済み。
現在テスト中。
リアのリーフスプリング込みで¥98,000予定。
ローダウンとリフトアップ、両方をリリース予定。
純正アッパーマウントのまま、キャンバー角5度も可能!(爆)
日本人のライフスタイルが、コロナ渦で一気に替わってきたように感じます。
軽トラックモディファイは、以前は非常にニッチでマニアな世界でした。
いまや人気カテゴリーの一角。
昨日、クラウンが生産中止という驚くべき報道。
「いつかはクラウン」という日本人の憧れ。何よりトヨタ自身のイメージとして60年以上守ってきた伝統。
復活させる場合にはまったく違うコンセプトの車種に変えてしまう可能性が示唆されています。
トヨタほどの巨大企業になれば、変化よりも守りに入りたがるもの。
「コロナさえ終われば」「コロナさえなければ」と小店舗、中小企業でさえ守ることで必死。
その状況下で先手を打ち、一歩前に進む姿勢には、同じ製造業として賞賛。
トヨタほどの会社がコレだけの決断を受け入れようとしている。
それほどに今、時代が大きく変化しています。
手前味噌になりますが、当社は10年前からこのような事態を予測し、準備してきました。
当時、20年以上販売していたミニバン用の車高調を全て廃止。
「ミニバンブーム」はるか以前から販売しており、とても愛着のあった製品。
一時期はバックオーダーが毎月1,000台を軽く超えた時期もあった名品。
「他社よりもっと安かったら売れる」「海外製は半額だよ」
ある時期から価格ばかりが話題になり、商品寿命の限界に気づきました。
とはいえ、その当時でも毎月、全体の売上げの数割を担ってくれていましたから断腸の思い。
過去にすがっていては新しいことはスタートできない…
数年間はつらく厳しい時期が続きましたが、その苦悩のお陰で原点に立ち返れました。
ショップさまからのさまざま提言に耳を傾け、製品改良や新商品開発に取り組むことに注力。
営業会議では、営業マンの販売ノルマをチェックし追及することを撤廃。
「売り込む」話ではなく、「売りたい商品」を愉しく話し合える場としての再構築。
開発前から売れることが約束された商品なんて無い。とにかくやってみよう、の精神。
ハイゼットカーゴのパーツが作れるようになったもの、
ジムニーパーツをてがけられたのも、全てあのときの決断があったからこそ。
商売での守りは、逃げていることと同義。
商品が売れると必ず陥る罠、安心感と停滞。
あの時の苦しさから当社が学んだのは、商品開発に終わりは無いということ。
変化を恐れず、新しいものを求め続け、前進し続けること。
残念ながらダイエットは後退しております…